特集ーアイフェイズ設立3周年
2002年4月、東京工業大学理工学研究科有機・高分子物質専攻 橋本研究室の、熱拡散現象を物質の構造や相転移と絡めた長年の研究成果をベースに大学発ベンチャーとして株式会社アイフェイズは設立され、皆様のお陰を持ちまして3周年を迎えることが出来ました。そこで設立3周年の特集を組みました。

代表取締役 渡辺孝の挨拶
顧問 橋本壽正の挨拶

モバイル開発計画について

代表取締役 渡辺孝の挨拶
三年経って

弊社製品ai-Phaseモバイルは、自画自賛となってしまうが魅力的である。3年前の創業当時、このような製品を世に送り出せるとは想像もしなかった。従来出来なかった熱計測ができ、おまけに同時に厚みまで測ることができ、さらに簡便に扱え、どこにでも持ち運べ、かつ安価である。

開発の主役である橋本教授グループのものづくりセンスの成果であるが、このことは日本の大学に基礎研究の成果をものづくりまでトータルに追求できる力が残されていることの証明でもある。3年間の開発過程ではいろんな紆余曲折があり、強い意志と情熱がなければ新しいコンセプトの技術を完成まで持っていくことはできない。弊社の代表として、ai-Phase α、ai-Phase IRに継ぎ、ai-Phaseモバイルを生み出せたことは、わが子の誕生に通ずる喜びである。これら製品群が各種産業の縁の下の力持ちとなって、環境に優しい新しい産業構造の創出に貢献できればこれ以上の喜びはない。

3年間の製品開発ステージが終わり、いよいよ製品普及の第2ステージに移る。ユーザー企業様から相応の評価もいただき、かつ、ISOに認定されるなど追い風にある。しかし、この技術は、いわゆるDisruptive Technology (破壊的技術)に属し、新市場を切り開く使命を持っている。それだけに、マーケティングに関し様々なハードルを乗り越えていかなければならない。とりわけ、多くのユーザー企業様からの「使える」という認知を受けることが必須である。いろんなご要望をいただき、そのひとつひとつの課題に従来以上に真摯に取り組んでまいりたい。


顧問 橋本壽正の挨拶
石の上にも三年

三年前ひょんなことから、私たち自身が熱計測装置を開発するベンチャーアイフェイズを立ち上げた。多くのご支持を頂いてどうにか3年をクリアできたという、皆様への感謝で一杯である。ベンチャーの大変さは、あとからじわっと認識されるもののようだ。大学とベンチャーは、複合語にしてはいけないほどベクトルが正反対である。考え方、規制、自己規制、世間の目などがまるで違うのである。固定観念を逃れるのがたいへんであった。アイフェイズの方針と製品を見ていただければ、従来の熱物性測定機のイメージを一新していることがご理解いただけると思うし、伝熱の問題で悩んでいる方々への福音となることもご理解いただけるのではないか。

丸ノ内線新中野駅の近くにプラメディアリサーチという会社がある。プラスチック成形における樹脂の流動固化過程をシミュレーションするソフトを開発している優良企業である。創業14年というからベンチャーの走りである。その江原賢二社長との個人的なつきあいはずいぶん長く、創業の頃のいろいろなご苦労も知っている。まさか自分も会社を興すとは思っていないから、大変だねーぐらいに気楽に見ていた。プラスチックの成型には熱物性が不可欠である関係からつきあいが続いているわけだが、江原社長は当初から、シミュレーションには物性が一番重要であると看破しておられた。いまでもその方針はいささかも変わらないので、熱物性測定を生業とするものにはどんな状況でも頼もしい存在である。

1990年前後と思うが、江原氏を中心に、これからの熱物性計測機を語ったことがある。如何に物性が大事でも、データベースが少なく、まずは測定器が必要だったのである。酒席での結論ではあるが集約すると、小形軽量、簡便、迅速、複合測定でなきゃということに落ち着いた。以後、試料が装置の前に進み出るのではなく、装置が試料の方へやってくるを標榜して、あるいは頭の片隅において、研究を進めてきた。ようやく出たその答えが、アイフェイズ・モバイルである。かなりの程度達成されていると自負している。是非直接ごらん頂きたいものである。

さて、前記のプラメディアの3周年の記念に、石の上にも3年と書かれたテレホンカードをいただいたが、いまでも大切に保管している。ベンチャーも基礎の3年を切り抜けるとステージ1はクリアであり、事業拡大というステージ2に入る。江原社長は、かねてから継続こそ力なりという言葉を座右の銘にしておられるようだが、アイフェイズも3年経てみて、全くの同感である。先達の歩んだ道は貴重な財産である。プラメディアの14年を目標にして、地道に発展させていきたい。石の上にも3年。含蓄のある言葉である。


モバイル開発計画について

熱物性が重要でもそのデータが少なくて、より多くの測定データを得るために、小形軽量、簡便、迅速、複合測定ができ、試料が測定装置の前に進み出るのではなく、装置が試料の方へやってくる。
'90年代、そんな熱物性測定装置があったらという思いがありました。

以後その思いを頭の片隅に研究を進めて来きましたが、(株)アイフェイズ設立を機に、そんな装置の実現の可能性が出て来ました。
従来面倒な手続きが必要であった熱拡散率・熱伝導率測定が,サンプリング処理を全く必要とせず試料をそのままの状態で挟み、ボタンを押す操作一つで直読できる測定装置という具体的イメージのもと、アイフェイズ・モバイルの開発が始まったのです。

測定系を大幅に簡素化して,ロックインアンプ機能,シグナル源、センサー回路、温度波解析機能も独自開発のアンプへ内蔵し、さらに厚み計も組込むという独自の設計が具体化し、試作1号機が2003年秋に出来上がりました。
試作1号機から製品アイフェイズ・モバイル1までの歩みをご覧下さい。(橋本壽正)


試作1号機
計測ユニットはホッチキスからイメージ、コントロールユニットは木製ケース。
プロトタイプ機の試作
昇降レバーの付いたアームを持つ測定ユニットはジュラルミンを削って作り、カバーは木製。
プロトタイプ機
性能、機能は現在のものとほとんど変わらない商品化のプロトタイプ機、アルミ鋳造とステンレス。
ゴム型
量産を考えアルミ鋳造のデザインを一新、ゴム型でプラスチックの原型を製作。
プラスチック原型
プラスチック原型を作り、削ったり付け足したり、さらにデザインを詰める。
アルミ鋳造の試作
プラスチック原型からアルミ鋳造された測定ユニット。カラフルな色も塗ってみた。

アイフェイズ・モバイル1

モバイルの回路方式も最新のディジタル技術の粋を集めて、シンプルで高性能を実現しています。インターフェースはノートパソコンを意識してUSB、もちろんパソコンなしでも測定可能です。 本機は研究者が現場で簡単に使えるような工夫を随所にちりばめ、オートモードの簡便さ、論文にも使えるマニュアルモード、さらに使いこなし次第で可能性を広げられるように、補正パラメータ、補正式も変更出来るようになっています。熱伝導率問題に携わっているみなさんに是非さわって頂きたいと思います。