ai-Phase system
アイフェイズ・モバイルシステムについて
アイフェイズ概要
アイフェイズ・モバイルは,温度波を利用した熱拡散率・熱伝導率・熱浸透率測定システムです.装置全体の基本設計,電子回路,熱源マイクロヒーター,高感度センサー,解析ソフトまでの総てを弊社の独自技術で開発・製造しています.データの解析アルゴリズムは,東京工業大学での豊富な実績と,弊社の創立10余年にわたる経験をもとに,カスタマイズを含めて,材料熱解析のあらゆる分野に適応できます.従来法では測定が難しい透明薄膜(ガラス類・プラスチックフィルム),粉体,液体,金属箔などの測定が可能です.弊社では目的に応じた3種類の装置を販売しておりますが,いずれの方法も交流通電ジュール発熱を熱源とし,厚み方向の拡散をディテクトする熱物性測定となります.装置販売のほか,コンサルテーション,依頼測定を通じて,温度波法のエレガントで機能的な状況を感じて頂けると思います.
測定対象は,ほとんどの物質・材料です.温度波法のメリットとして,試料の熱拡散率と厚みの二つの熱移動因子の大小に応じて周波数の選択することで,最適な条件を決定できる点にあります.モバイル1では0.1Hzから1000Hzまで可変ですから,絶縁体から熱透過性のいい金属箔まで測定可能となります.測定された試料を表示します。
熱伝導性ゴム・銀ペースト・炭素系フェルト材料の測定に関しての注意点

装置概略 温度波法とは
装置は,小型トランクに収まる,熱伝導率測定装置としては画期的な超小型軽量です.省エネルギー設計になっており,電源は商用電源のほか,USB給電,電池なども可能です.平均的な測定時間は約1分ですから,いつでも,どこでも測定できます.製造現場でも,プレゼン会場でも,ご自宅の机の上でも,場所を選びません. テスター感覚で熱伝導率・熱拡散率が評価できます. 温度波法とは,交流的な温度変化を与え,二点間で伝搬したときの振幅変化減衰と位相の遅れを精密に測定する方法です.モバイル1は,位相遅れを観測する薄膜用高感度型(ポリマーで5ミクロン,金属箔で20ミクロン程度まで),モバイル2は1型に小型ヒーターを仕込んだ温度可変型,モバイル10は 振幅解析型で,液体・発泡体・プラスチックを中心としてバルクの熱伝導率測定装置です.


交流測定のメリット
交流測定では,振幅(減衰)と位相(遅れ)という2つの観測値が得られます.アイフェイズモバイル1,2は,原則的に位相計測型で、環境の影響を受けにくい高周波数側で測定します.一方振幅(温度の絶対値)からは,熱インピーダンスが得られ,熱エネルギーの輸送量が関係する熱浸透率に換算できますが,モバイル10は,十分に低周波数の熱伝導率の影響が大きい条件を使います.

温度波の振幅 温度センサー
温度波法のメリットとして,周波数測定を熱物性と厚みの二つの因子に応じて最適条件を決定できる点にあります.温度波の大きさは,通常入力側で1℃未満と微弱です.試料に与える影響も少なく,また対流や輻射も押さえ込める条件です.センサー位置ではmKオーダーと微弱なシグナルになるため,ロックイン増幅により高感度で用いるので試料への影響も少なく,同時に線型性の確保も用意しております.これらの高感度性は小さく薄い試料への適用が可能であり,結果として温度制御の容易さに繋がり,測定時間の短縮になって,多数の測定データがえられ得られることで統計な熱物性解析を可能にしている点にあります. 温度センサーは,抵抗型で微弱なバイアス電流を与えています(モバイル1型).1kHzという高周波に応答させるために極力熱容量をさげております.有効なセンサー面積は0.5x0.2mmと微少なため,熱拡散率の分布が測定できる画期的なものです.表面を保護する目的で2.5μmのPETを貼って出荷しております.保護膜はベースラインとして計算から除外されます.装置は物性に加えて,形状や内部構造,接する環境(センサーや空気を含めて)に敏感です,試料全体の代表値のみでは,現代的な精密材料評価にはなりにくく.本稿では,この温度波法の説明を中心に熱解析の留意点について解説します.


ベースライン
ベースラインとは,試料以外のセンサー・ヒーター・表面保護膜等の影響による装置常数のことです.モバイル1では,位相分を,モバイル10では熱抵抗分として差し引いて,試料由来の値のみ抽出しています.二枚の薄物を積極的にベースラインと定義することで,サンドイッチの中身を知ることができます.基材から剥がしにくい材料評価に威力を発揮します.

熱伝導率へ 厚み計
熱伝導率への換算は,位相変化から熱拡散率が求まるモバイル1,2では,別途求めた定圧比熱容量と密度から関係式(熱伝導率=熱拡散率x定圧比熱x密度)を用いて換算します.値はソフト上で入力します.モバイル10は,振幅測定から減衰率(熱浸透率と関係)を測定し,さらに熱伝導率値が既知の比較試料(例えば水)を測定し,未知の試料で得た値と比較することで熱伝導率直読型としています. 厚さは,装置アーム内に取り付けた差動トランスで逐次測定しています.ただし,相対的な換算になりますので,測定対象と同等の基準厚みゲージで校正する必要があります.また気温などの環境変化でドリフトすることがあります.金属やセラミックスのように硬い試料ものはマイクロメータなどで事前に厚みを測定しておき,ソフト上で厚み表示部に手入力して熱拡散率算定に用いることもできます.


温度依存性 お手入れ
温度依存性測定は,モバイル2で,およそ180℃まで測定可能です.加熱は測定部分に限定され,外観や取扱いはモバイル1とほぼ同等で熱拡散率がえられます.ポリマーなどの融解やガラス転移での流動による厚み変化を規制するためのアームストッパーを使用します.センサーの耐熱性向上のために若干計測系の熱容量が大きく,測定範囲に制限があります. 日常の手入れは,表面を柔らかなもので拭く程度です.よごれがひどいときは,水拭きかエタノール含浸布で軽く拭き取ります.指先でぬぐう位が一番安全です.保護膜がしわになったら綿棒で伸ばします.残留フィラーや接着材のわずかな残渣が密着性を悪くします.厚み計,ベースラインの再取得はこまめにします.かならず,標準試料での測定確認をしてください.


トラブル
メンテナンス 保護フィルムが破れたら交換します.また,電極が損傷しますと,データが不安定になります.メンテナンスは定期的の弊社で行うのが現実的です.小型装置のために,簡単に宅配できますので,一週間以内に調整しご返送いたします.電極再研磨(破損時は交換),絶縁膜貼り替え,オイルダンプ調整などで,出荷時の状態に戻ります.

ISO
ISO取得は,TC61 SC5(プラスチックの物理化学的性質)で,取得済みです.認定番号はISO-22007 (枝番の-3がモバイル1相当,-6がモバイル10相当)です.日本提案の方法論が成立するのは珍しいことですが,温度波法の熱拡散率・熱伝導率測定法としての優秀性が認められた自負しております.

測定事例

高分子フィルム
高分子薄膜は,黒化処理などの前処理が不要なため,もっとも温度波法の特性が生きる材料です.約10ミクロンから2mm程度まで対応します.試料片を切り出したりせず,大きさの制限はありませんが,最小はセンサーサイズの0.5mmまでです.熱拡散率は,結晶化度や配向度に敏感ですから,フィルム内の構造・物性・欠陥等の分布の検討も容易に行えます.

少量の高分子
新規合成高分子は,通常わずかの量しか得られないことが多く,物性測定ができず相互比較がとかくむずかしいものです.1mg程度で熱拡散率が測定できるモバイル1は,それらに福音となっています.大きさで1mm程度で十分ですから,測定は極めて容易です.分子量,高次構造,残存溶媒の影響など合成の正否の判定に使えます.

粒子分散系プラスチック
粒子分散系プラスチックは,モバイル1,2にて厚さ2mm程度まで測定可能です.ただし,硬い粒子をフィラーとした場合は表面の凹凸が結果に反映されます.研磨するかグリースの使用で対応します.大きさに特に制限はありません.熱拡散率測定ほか,フィラーの形状,粒界のぬれ性,空孔の存在チェックなどの評価に用いられている例があります.

無機物
ガラス・セラミックスなど,透明な試料でも黒化処理が不要で,原理的にもモバイル1,2に最適な材料の一つです.ただし,硬いものが多く,センサーやヒーター面との接触に注意が必要です.試料厚さは3mm程度以下.とくに「そり」と平滑度が問題ですが,本装置の特徴を活かし,1mm程度のサイズまで砕いて適切な箇所を探し出して測定するのも現実的です.

シリコンウエハ
シリコンウエハは,セラミックスと同様そのままの状態で測定できます.導電性物質には絶縁膜使用は必須ですが,センサー・ヒーター面の保護を目的に標準的に約2.5ミクロンの保護膜をつけています.また,表面に塗布した物質の測定も一定程度の厚さがあれば分離測定可能です.厚みの限界は物質に依存しますが,剥がさずに測定できるメリットがあります.

銀ペースト 金属箔
銀ペーストに限らず,原則的にピンセットでつかめる小さな試料片で測定できます.接触性向上のため,表面の凹凸は極力減少させます.薄いポリイミドフィルムや金属箔上(これらをベースラインにする)に展開して剥さずに測定することも可能ですから,熱処理前,後を同一試料片で行うことができます.粒子分散系は多数測定して分布に影響を判定するのが常道です. 金属箔は,50ミクロン程度まで対応しています.ただし,熱が伝わりやすので高周波数の適用となり,またシグナルレベルも低くなりますので,測定は慎重にマニュアルモードで行うことになります.合金,鉛フリーハンダなども100ミクロンオーダーで測定します.モバイル1は,位相の絶対測定で基準物質を必要としません.値の既知な純金属で装置の特性を評価します.


金属板
金属ブロックは,厚さ1-3mm程度の板状であれば測定は可能です.ガラス類と同様に平滑度とそりによる接触不良が最大の問題です.やはり研磨することとグリースを用いることで対応します.熱容量が大きくなるため印加電圧を高くします.試料の大きさは原則的に問いませんが,5mm角程度に切り出た方がシグナルは安定します.

単結晶 多層複合系材料
無機単結晶は,数ミリmm程度以下の小さなものがほとんどですが,センサーのサイズまでなら単結晶1粒の測定が可能です.接触の平滑度の問題はありますが,従来の市販機では測定できない領域でもあり,方向を変えての測定できまので,新たな熱物性知見が得られるものと考えております.もちろん,ショ糖単結晶やグルタミンソーダ単結晶などもOK. 測定の難しい電子基板などもそのままの状態で測定できます.3層のサンドイッチ型では,たとえば真ん中がはんだ,導電ペーストなどの評価に使えます.そのままの測定でも比較ができますが,両側の金属やセラミックスをベースラインとして差し引けば中心部の熱拡散率が求まります.測定は約1mm程度の大きさですが,試料としては特に制限がありません.


ラミネートフィルム 紙・不織布
ラミネートフィルムは,測定は容易ですが,複雑な層構造を持つことが多く,物性値としての熱伝導率や熱拡散率は定義できません.ただし,モバイル1で測定される位相遅れは,これらの断熱(伝熱)特性を示します.表裏の伝熱は,(時定数)=(厚さの二乗)/(熱拡散率)で評価されます.厚さを含めた熱的厚さとして,材料間の相対評価ができます. 紙不織布は,モバイル1を用いて原則的に一枚で測定可能です.ただし,本質的に表面凹凸があり,また空気を多数含む材料ですから,測定箇所の影響は大きくなります.また吸湿や油浸などの効果も観測できます.空気との複合体のため値は見かけ値となります.センサーサイズ0.5mmより大きな孔を有するものは不適格です.何枚か重ねてモバイル10で測定でも測定できます.


両面テープ・接着材 ゴム
両面テープ・接着材(固化前)は,薄いフィルム,金属箔,薄いガラス板等でサンドイッチして測ります.この場合は 両サイドの材料をベースラインとして差引き,厚み計のゼロ点を取り直して,中身の熱拡散率が直接求まります.また試料量が1g程度以上あれば,モバイル10で熱伝導率を求めることもできます.厚さ換算で2mm程度以上が必要となります. 弾力性に富むゴムは,センサーとの密着が容易です.薄物はモバイル1,消しゴムやゴムシートはモバイル10になります.フィラー入りでは,熱伝導率で1W程度までなら比較検討できます.素材の種類はもとより,カーボンブラックやその他のフィラーの影響,加工の程度など,少ない試料での評価が可能で,多数のサンプルを短時間で比較健康することが可能です.


水・液体
液体は,モバイル1でも10でも測定できます.与える温度差が小さいので対流の影響は無視できます.特に水は,熱伝導率,熱拡散率が知られた物質で,いずれの装置でも標準検定試料として採用しています.試料量が多いことと操作性が簡単なことから,モバイル10をお薦めします.ただし,相対的な評価となるため,値が既知の2つの物質の測定が必須です.

粉体
粉体・コピー機トナーなどは,モバイル10が最適です.プローブ中心のセンサーを覆うように置くだけです.試料量があれば,平板をあてがって加重印加して測定もできます.ただし1W・m・K以下のものに限られます.ポリマー粉ばかりでなく,セラミック粉,粉末状食品などにも対応できます.サンプル交換も容易です.

衣服・布
布類は,熱伝導率の評価がむずかしい素材ですが,モバイル10で何枚か重ねて2-3mmの厚さにして測定します.素材の種類,織り組織,密度,吸湿などで大きく変化します.この場合も空気との複合材料ですから,あくまでも見かけ値の熱伝導率となります.一般的に空気を多数含む素材の方が,見かけ熱伝導率は小さくなります.

面方向と厚み方向の比較
通常は厚み方向の測定となります.面方向の測定は切りだして行いますが,電極が0.3mmですので,単独または重ねて接着材で固めて切り出して行います.同一試料であれば,いったん検量線を引いておくと,厚み方向の測定値から面方向のおおよその値が求まります.

そのほかの材料

食品
食品は,多くの場合水を含むので,液体と同様にモバイル10が適しています.密着性がよいのでほとんどの材料が測定できます.水分量や油分によって値が変化することが判ります.食品は典型的な混合複合系材料ですから,あくまでも見かけ値ですが,同一装置同一条件なら相互比較は十分にできます.冷凍,料理では熱移動が問題ですから熱伝導率値は解析に必須です.

医薬品
医薬品は,ペレット状であればモバイル1,2でも測定できますが,粉体や食品と同様にモバイル10が適しています.市販薬は原則的に粉体か圧縮成形体ですが,そのままの状態で測定できます.この分野では,明確な理論が確立していませんが,包装材料をベースラインとして,袋ごしに熱伝導率を測定することで内部の物質を推定できます.開けずに済みます.

熱伝導性ゴム・銀ペースト・炭素系フェルト材料の測定に関して(参考)

*ガラス板上などで作製するとサンプルに表裏に違いがあることが多いようです.試料上面に凹凸ありでは上部電極の保護膜が剥がれやすくなります.とくに上部電極の形状通りに膜が打ち抜かれることが起こります.
*絶縁膜をはがしての測定も,電気伝導体でなければ問題ありません.ベースラインは取り直します.感度は向上しますが,電極の寿命は若干短くなります.グリースの使用をお薦めします.
*測定にはサンプル表面状態が一番影響します.試料を平滑に調整するのが第一ですが,測定直前にコピー紙などでこすり,突起などをとりのぞいて平滑化することも有効です.
*出荷時は2.5ミクロンのPETの保護膜を使用しております. より保護を強化する方法として,追加の保護膜をつけ,その分をベースラインとします.
 ・10ミクロン程度のラップをサンプル両面に貼り付ける方法
 ・離形紙または成形した薄板をはがさずに測定方法
 ・薄いガラス,金属箔などで挟んで測定する方法 (接着材の硬化後の測定を剥がさずに行う場合など)
 ・アルミホイルを上下ともに丁寧に貼り込む方法
いずれの方法も接触が問題の場合は,ほんの少しのグリースで密着させます.
これらの方法では,試料なしをベースラインとして測定し,同時に厚みのゼロ点を取り直します.
*金属や銀ペースト,炭素材料では電圧を3Vへあげて下さい.(通常は1V)
*粘着性がある試料は,貼り込んだ膜を引張りあげることがあります.上記の方法かあらかじめグリースをつけ密着性をさげて,ゆっくりアームをあげるなどの注意が必要です.
*貼り込みの場合は,気泡が入るとデータが不安定になります.追加保護膜では特に注意が必要です.
*本装置では絶対測定ですから,値を補整することは測定法上はできません.
ご自身の基準物質の値で規格化して比較したい場合は,測定者の責任で係数を掛けることになります.
コンフィグのgap1に係数0.9を入れると,熱拡散率が1.1倍されます.
*粒子分散系の熱拡散率は,かなりの分布となります.装置の確度5%以内に収まることはありませんので,場所を変えて最低10箇所は測定してください.
*やわらかなゴム系材料や硬化途中では厚みが減少します.少し置いて安定してから測定してください.
*厚みは 結果に大きく反映されます.厚み計の校正は荷重を乗せて10秒以上と安定してから行って下さい.ゼロ点は毎回お取り下さい.
*厚み計は温度ドリフトがあります.特に使いはじめは動きます.近傍で大電流が投下されたときもノイズが入ることがあります.500ミクロンのジルコニアが標準板です.したがって100ミクロンより薄い場合あるいは1mm以上の厚い場合は,厚み計の再較正が必要です.
*正確を期す場合は,マイクロメータのような絶対的な厚み計でチェックしてください.
*測定周波数帯は,オート測定では位相角を指定して周波数を自動で決めています.2点での直線近似これらの値をもとにマニュアル測定すると精度は向上します.指定点数での回帰で計算します.周波数は厚さにも依存します.位相が190度と220度になるような2つの周波数が原則です.
*品質管理に用いる場合は,絶対値よりも繰り返し精度ですから,条件,サンプル厚さをほぼ同一にするのがよろしいかと思います.汎用性はなくなりますが,電極表面にガラスなどを接着材などで固定して安定化させる方法もあります.
*装置の状態判定に,熱拡散率判った標準試料で測定開始前にかならず測定してください.

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