モバイル Q & A

・アイフェイズ・モバイル システムデザイン

アイフェイズ・システムは、熱伝導測定の総合計測システムです。赤外線カメラによる2次元熱分析装置アイフェイズIR、熱拡散率の温度依存性が正確に求められるアイフェイズαに加えて携帯性・簡便性を重視したアイフェイズ・モバイルを提案致します。本装置は、平板状試料の厚み方向の熱拡散率を測定する装置です。温度波の伝搬による位相遅れを正確に観測するので熱環境に対する安定性がよく、温度の絶対変化を計測する熱線法やレーザーフラッシュ法などの従来法とは異なります。アイフェイズ・モバイルは、その名の通り現場に持ち込める装置を念頭に、B5サイズ・3kgを目標に開発されました。薄膜・フィルム状試料の厚さ方向の熱拡散率・熱伝導率を同時測定する装置を目指しております。表面が平滑であれば、黒化処理等の前処理は全く必要としません.

表面で発生させた温度波が厚さ方向へ拡散して裏面に達した時、振幅の減衰と位相の遅れを生じます。温度波分析は、これらを厳密に解析することで熱拡散率と熱伝導率が算定できるという原理に基づいた分析法です。この方法の正確さを残しつつ、測定系を大幅に簡素化して、ロックインアンプ機能、与えるシグナル制御、温度波解析機能もワンボードで収まるように設計製作致しました。さらに厚み計も組込み、従来面倒な手続きが必要であった熱拡散率・熱伝導率が、試料をそのままの状態で挟み、ボタンを押す操作一つで直読できる画期的な装置です。

熱の拡散量は、試料の熱的性質と熱源からの距離(試料の厚さ)で決まります。変調する方法では、周波数も関係します。また、実験上の種々の問題、例えばセンサー感度、回路時定数、与えられる熱量など様々な因子を考慮する必要があります。
そのためにたくさんの工夫を盛り込みました。表面での試料とセンサー、シグナル源との界面がによる位相の回りは、ブランク測定で差し引けるようになっています。試料に応じて決まる最適測定条件の決定には経験を必要としました。本測定システムでは,永い経験から導かれたアルゴリズムを導入し、測定条件を自動的に設定する解析ソフトを搭載しております。もちろん、より正確な測定を目指したマニュアルモードも装備しております。

熱は、完全に絶縁することができません。電気計測では,絶縁体と導体の抵抗は15桁も違いますが、熱伝導では2-4桁程度です。また反対に完全に接触伝熱させることもできません。このため、試料とセンサーや信号源との接触抵抗がどうしても無視できないのです。むしろ、多層試料と考え、界面込みの熱伝導性の評価となります。データが少ない物性であることは、このあたりに起因します。アイフェイズでは、まずデータを取って見ること、さらにもっと多くのデータを取ること、統計的に処理して有意差を検定することを提案します。新しい切り口が見えてくるはずです。
・装置の構成

装置は試料をセットする本体と、データ解析をするコントロールボックスの二つからなります。本体には、ヒータ側電極と、センサーがありますが、薄膜導体の抵抗変化ならびにジュール発熱を利用しています。発熱と言っても高々1Kの非常にわずかな温度振幅で、試料にダメージを与える心配はまったくありません。センサー並びに厚み計のプリアンプを本体内に内蔵し、ノイズに強くしてあります。また、ヒータとセンサーは容易に交換可能となっております。試料表面に与える交流温度波は、任意の周波数の交流電流を信号源電極に通電することによって実現されます。この温度波は試料内部を拡散し、試料裏面まで到達します。このとき,試料裏面での温度変化を特殊なセンサー電極で観察し、コントローラにより加熱面との位相遅れおよび振幅の減衰を検出します。位相検出にはロックインアンプが必須となります。

コントローラ部では、16ビットA/Dコンバータ経由でセンサ信号を100k回/秒で取り込み、与えたサイン波を掛け合わせて積算し、同様にコサイン成分も積算することで、それぞれの積分値を得て、振幅と位相を求めておりますので、熱拡散率測定によくある単純な温度変化を読んでいるわけではありません。いわゆるフルディジタルロックインアンプ方式で温度波を解析しております。測定中の試料の若干の温度変化、50Hz,60Hzの商用電源ハムノイズが影響しないように条件を設定してあります。また、出力の周波数は4kHzまで可能ですが、精度を勘案すると1kHzまでを推奨しておりますが、通常の試料では全く問題がありません。

本機の厚み計は、差動トランス方式です。外乱の影響を極力さけ、トランス出力と厚みが直線になる領域を使っています。オフセットと直線の勾配(感度に相当)を標準試料で求めておけば、はさむだけで簡単に掲示されます。直線域は約1mmを想定しておりますが、より厳密には測定試料の同じ厚さ程度の標準試料で較正することができます。
・操作性

パソコンを使用しない場合の操作は簡単です。

・コントローラ右側面の電源を投入します。液晶パネルに「Please Wait」と表示され、ついで厚みの表示がでます。

・試料のない状態で,アームを下ろし、信号源とセンサーを接触させます。

・ゼロリセットボタンを押して、厚み計の0点をリセットします。

・測定したい場所が電極の中心になるよう試料をセットします。

・スタートボタンを押します。周波数を自動的にスキャンして、最適値を捜します。

・接触不良などで周波数がロックしない場合はエラーメッセージが表示されます。

・この場合には、試料をはさみ直してから、再度測定を行います。

パソコンを使用する場合は、確認が簡単で条件設定も行えます。

・コントローラとパソコンとをUSBコードでつなぎます。本機はキーボードを持たないので、各種較正、データセーブなどはお手持ちのパソコンを使います。ユーザーフレンドリーなソフトウエアが付属しています。XP,2000,SE,98 上で動作いたします。

・ 画面上でゼロリセットを押し、試料を装着の後、スタートボタンを押します。ここではオートモードとマニュアルモードが操作できます。通常は面倒な条件を自動で決めるオートモードとします。

・ 周波数を変えた時の位相遅れが順に画面のグラフ上にプロットされますので、リアルタイムで測定の適否を判定できます。

・ 適切な周波数は、試料の厚さと熱拡散率で決まります。厚いものや熱拡散率の小さい試料では低周波を必要とします。高周波では裏面まで温度波が届かないのです。デフォルトでは、1Hzからスタートし、多くの場合対応できますが、熱の伝わらない断熱材、逆に熱伝導性に良い材料で薄いもの(表裏の温度差を付けるのが難しい)では、この設定周波数範囲を変える必要があります。

・ 同時に、増幅系の時定数を変更する必要があますが、本機はかなり広い範囲の測定に対応できるように設計されております。計算で必要なのは、位相と周波数の平方根が直線になる領域です。常にパソコン画面で確認できます。

厚み較正、ロックインアンプの条件設定などは、簡単に行えますが、各パラメータはコントローラ内のフラッシュメモリに格納し、パソコンなしでの測定にも適用されます。
・試料調製

原則的に平板状である必要があります。試料サイズは最低で3mm角程度は必要ですが、測定はこのうちの1mm平方です。この面積内で十分に平滑と見なせるならば、紙類、布などの多孔体でも、注意深く測定することで再現性のよいデータが得られます。わずかしかない試料の測定に威力を発揮します。水を含んだ系、導電性のあるものなどは原則的に測定可能ですが、電極部分への影響を考える必要があります。

高分子系の材料ではおよそ300ミクロンから薄いものは測定できます。セラミック系ガラスは、50−600ミクロン程度、無機の結晶体で100−1000ミクロン程度ですが、材料の伝導性によって前後します。また余り厚い試料では面方向への熱逃げの影響が出てきますので、できるだけ100−500ミクロンになるように調製することを目安とします。多層膜、フィラー入りの材料などは、見かけの値となりますが、上記の条件内では測定可能です。溶液は、容器を試作中ですが、原則可能です。グリース、オイル、ゲルなど、高分子フィルムと同程度の厚さ範囲で測定できます。

いずれの試料でも、試料表面とシグナル側センサー側の接触問題は避けられません。簡単な測定という利点を生かした多点測定で納得行くデータの収集が可能となりました。

アルミホイルなど熱伝電性でかつ厚さが薄いもの、反対に1mm以上の合板、表面の凹凸の激しいものなどは測定が困難です。別の方法をお勧めします。

モバイル Q & A

Q 1. 温度波というのはどんなもの?

A . ジュール発熱と温度波

温度波とは聞き慣れませんが、熱は高い方から低いほうへ流れます。同じ物質ならば熱量が多い方が温度は高くなります。地表を例に取ると、太陽が昇って温度がどんどん上がって行き、かげるとまた下がって行きます。この熱は地中にも拡散していきます。この熱の流れは一日を周期とした温度の交流的な変化です。つまり温度波あるいは熱波です。地中のどの辺まで一日周期の温度変化が感じられるか。だいたい数センチと言った所です。この波の形は、音などと較べて急激に減衰して崩れます。すぐに波としては観測出来なくなります。つまり、温度波が消滅します。観測できる範囲までなら、振幅の減衰と位相の変化もわかります。もっと長い夏冬の一年周期となる波は、ゆっくりとした変化ですから、もう少し深いところまで影響が及びますが、土が1mあれば温度波が感じられなくなり、一年中同じ温度になるわけです。つまり、厚い物質ならば深い所まで届くには周波数を遅くすればよいことになります。
温度波熱分分析法は、上記の場合と全く同様で、厚さと熱拡散率が、適当な周波数でどのくらい位相変化と減衰があるかを知る方法です。表面と少し中に入った部分の温度波を正確に捕まえ、両者の関係を知ればいいわけです。幸い接触型のセンサーは感度が高く、薄膜として用いればセンサー自身の熱容量を減らせるので影響を最小限にできます。

試料表面に与える温度波の振幅は,1度 C 以下になるように試料表面での発熱量を調節します。これは温度波による試料の温度上昇をできるだけ小さくするためです。温度波は試料内部を伝播するうちに振幅は減衰し,位相は遅れます。この様子を検出することで試料の熱拡散率を測定します。

電気抵抗に電気を流すとジュール発熱が生じます。アイフェイズ モバイルはこのジュール発熱を利用した熱拡散率測定法です。ただし、発熱と言っても振幅で1度 C 以内の極めて微弱なものでヒーターではありません。試料に変質や変形を与えるものでは全くありませんので、完全な非破壊試験です。

もう一つジュール発熱は電流と電圧の積で求めることが出来ます。交流電流を電気抵抗に流すと,発生するジュール発熱の周波数は通電した周波数の二倍になります。温度波は、すべての方向へ拡散していきます。アイフェイズ モバイルシステムでは、微小面積の温度波シグナル発生器をとりつけ、試料を通過したものをロックして解析致します。周辺への熱逃げは、振幅に影響しますが、位相にはほとんど影響がなくこれを利用します。

アイフェイズ モバイルでの周波数とは,温度波の周波数を指します。
(通電する交流電流の周波数の二倍です。)


Q 2. 温度波熱分析の原理とは?

A.
アイフェイズ モバイルは,試料の両側を二枚の電極で挟み込んだ系で測定を行います。それらの電極が,交流温度波の発生のための信号源,試料内部を伝播した微少な温度波検出のためのセンサーになります。

アイフェイズ モバイルにおいて,信号源の電極の厚さは試料の厚さと比較して非常に薄いため,試料表面に与える交流温度波の厚さと垂直方向への熱量は無視することができます。そこでアイフェイズ モバイルでは厚さと平行方向のみの一次元の熱拡散のみを考慮しています。

・熱拡散方程式の解
アイフェイズ モバイルでは次のような一次元熱拡散方程式を解いて,解析を行っています。
この一次元熱拡散方程式を解いて,交流温度波を与える試料裏面から試料の厚さ分(d)だけ離れた試料裏面での温度変化は次のように求められます。

上記の条件下で一次元熱拡散方程式を解いた解になります。
上の式で位相成分について注目すると,試料裏面で検出される,試料内部を伝播してきた温度波と,試料表面に与えた交流温度波との位相差は次の式で表されます。

この式から,温度波の周波数と位相差の間に直線関係が成り立っていることが分かります。すなわち,試料の温度を一定にし,試料表面に与える交流温度波の周波数を変え,それぞれの周波数について,試料裏面での位相差を測定します。この位相差を周波数の平方根に対してプロットしたとき,得られた直線の傾きから試料の熱拡散率を求めることが出来ます。

Q 3. どんな応用が期待できますか?

A .
・高分子、有機物の融解過程ならびに溶融後の状態での物性測定
・熱伝導解析、流動解析などのCAEのための材料熱拡散率データ収集
・伝熱グリースの熱伝導性評価
・感熱紙の性能評価
・エポキシ樹脂などの熱硬化過程の解析
・水溶液、生体物質等の凍結過程の解析
・高熱伝導性フィラー複合材料の熱拡散率測定
・有機結晶、製薬の転移現象の解析
・ low-k材、IC封止材など電子関連材料の熱拡散率
・スピンコートした超薄膜の物性測定
・熱伝導性の異方性評価
・多層系の界面熱抵抗評価
・断熱フィルム(熱転写プリンター用紙など)の熱解析
・食品の熱拡散率


Q 4. 試料の厚さと測定周波数の関係は?
A .
交流温度波を用いた測定では,熱拡散長さが重要となります。これは交流的に与えられた熱(温度波)が試料中に拡散するとき,どの距離まで波形をもって到達するかの目安を与えるもので,振幅が1/eに減衰するときの距離を熱拡散長といいます。は長さの単位を持ち,次のように定義されます。

もしも,同一物質で同一の状態であれば,与える温度波の周波数が大きいときには短く,小さいときには長くなります。また,同一の周波数であれば,熱伝導性の良い金属などでは長くなり,高分子などでは短くなります。

一般に試料の均熱性を評価する指標として用いられ,試料の厚さが熱拡散長より十分薄い場合を「熱的に薄い」と呼び,試料内を一定温度とみなして解析されます。これに対して,試料の厚さが熱拡散長より十分厚い場合は「熱的に厚い」と呼ばれ,試料の表面と裏面の間で温度波の振幅が減衰することを意味します。

熱拡散長の逆数を下の式のようにおくと,試料の厚さと周波数,熱拡散率の関係から,熱的な厚さの関係は次のように表すことができます。

ーー熱的に薄い
ーー熱的に厚い
アイフェイズ モバイルでは,熱的に厚い条件下で測定を行います。従って,試料表面に与える温度波の周波数は試料の厚さに応じて最適な周波数範囲を選択する必要があります。アイフェイズ モバイルでは自動的に最適な周波数範囲を設定できるようになっています。
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