データの正しさの判断は?
もっとも関心のあるとこですが,もっとも難しいところです.位相型の温度波分析法では,位相すなわち時間を測定していますの,比較試料がいらないという特徴があります.したがって,条件さえ合えば,どんな試料でも測定できます.ただし,方程式の要請からkd>>1という条件がありますが,これが結構曖昧です.バッキング材料との物性値の大小関係が依存するからです.弊社はkdを2.5−3.5 あたりとしてオート測定条件を提示しております.角度で言うと,180-240°程度に相当します.測定される熱拡散率はこの位相範囲によって若干ずれル程度ですので,オート測定では決められた位相変化を与える周波数を探し出しております.この決められた条件で,標準試料が一定の範囲に入ることを確認して,測定サンプル結果を判断します.
特に金属や配向試料は横方向への熱拡散が大きく厚さ方向の熱量が減る傾向にあります.したがって,つねに比較物質を用意し,それとの比較をもって,上記の条件設定の善し悪し,データの正しさを判定するようにします.できるだけ測定対象と似たものであることが前提です.アイフェイズM3シリーズは,ミツトヨ製のセラミックゲージ500μ(ジルコニア焼結体)を標準として添付しております.測定値はつけておりますが.焼結体ゆえに,若干のばらつきがあります.長い間の経験から決めた値をつけて出荷しておりますが,絶対値の保証は難しいところです.
ほかの標準物質として,ポリイミドフィルム,ガラス板,石英板,サファイア板,ステンレス板,インジウム,すず,鉛,アルミ,銀などですが,同一機種,同一条件での測定結果の比較で正しさを判定します.また,かならず繰り返し測定して,統計的に判断するのも有効です.特にベースラインはセンシティブです.標準試料が合わない場合などは,何度も取り直して結構です.また,サンプル測定の場合,最低でも全く動かさずに3回測定し,一致するまで測定します. 測定プロットで,一点でも直線から外れたら,再測定です.接触不良や振動などであきらかにデータがはずれたものはカウントしない(平均に加えない)でください.詳しくは使い方の該当部分もお読みください.