界面の評価についてー接触抵抗の疑問に答えます
サンプルとセンサー等の「接触抵抗が測定データに影響しないか」という問いがよく寄せられます.サンドペーパーのようなものを除いて,通常の平板試料ではほとんどありません.ただし,金属,無機材料のような硬い試料ではわずかなソリの影響で接触不良が起こりますが,これは接触抵抗には含みません.
材料には実際は平らに見えても1ミクロン未満の凹凸があります.グリース等で埋めることができますが,熱拡散率への影響は,たとえば100μmの試料に1μmの界面(よごれ,小さな隙間,グリースなど)と仮定しても,影響は厚さの二乗ですから,1万倍の差になり十分無視できることが多いことがわかります.複合材の熱拡散率のばらつきは10%程度以上あることも多いので,界面はあまり意識しなくともよいことになります.より安定な測定をするには荷重を多めにかけること(試料のクリープ変形,界面の変化に留意して),何度か再測定することをおすすめします.
界面が問題になるのは金属箔の場合です.「そり」などを含めて注意深いサンプリングが望まれます.M3などではブランク測定(ベースライン)を測定して差し引きますので,ここで界面分を差し引いていることにもなります.アルミフォイルなどは,ベースラインに近い変化となるため難しい測定になります.測定法上は,接触界面の影響よりも,接触状況,つまりセンサーヒータ間で垂直に熱流があるという前提で厚さが求められますが,片当たりなどで実際の熱流が不安定になることが問題となります.またセンサー,ヒータ,配線材などの厚み方向以外の熱逃げは増え,見かけの熱容量が大きなりシグナル強度に反映されます.ただし,保護膜やグリースも広い意味で界面ですが,ベースライン法は,これらの影響を差し引いておりますので,より正しい値に近づくことができます.