物性測定のむずかしさ
物質・材料の物理的性質を物性というが,大きさや重さに関係なく決まる値なので,材料の選択には必須の性質である.が,測定は結構むずかしい.堅さを数値化しようとすると,弾性率ということになるが,測定法の教科書を開いて測定しようとしても,測定条件やサンプル作製に結構制限があって,容易に求まるものでもない.熱物性も同様で,測定法としては難しい部類に属する.体重計や天秤などのようにはいかない.
アイフェイズ・モバイルは,物性測定の難しさをできるだけ自動化して,簡便に熱物性を手に入れられるような装置を目指してきた.多くの研究者は,測定法や原理に興味があるわけでもなく,物性値だけが必要というケースがほとんどなので,短時間で,誰でも簡単に測定できるように設計製作されている.
この簡単さが,どうして毎回同じ値にならないのかという不安感を呼ぶようだ.体重計は何回乗っても55.5kgなどと出るが,熱拡散率は結構変動するのはおかしいと思われるようだ.物性はたいてい二つの測定を同時に行う必要がある.熱物性で言うと,温度の速度と厚みである.厚み計で測る距離と,実際に熱が通る距離は必ずしも一致しないし,測定中のノイズ,変形や温度湿度の影響もある.オートマチックしにても,やはり限界があり,むずかしいものなのである.
これを何とかしたと誰しも思うが,試料やコンティションによるので,これで正確に測定できるという完全マニュアルなさそうで,弊社での検討も20年近くになるが,未だに難問が持ち込まれるのが現状である.同じ測定条件設定とつねに基準物質との比較,多数の測定結果の統計的処理あたりが,常識的策となろうか.各自の使いこなしということになる.それよりも,相談を受ける一番の問題は,装置の汚れ,保護膜に破損など,不注意によるものが一番多い.また条件設定が狂ってまま使っていることもある.これらも簡便測定とした弊害なのかもしれない.物性測定は繊細で微妙なことを忘れさせているだろうか.