面方向の熱伝導測定は難しい?
薄膜の表面方向の熱拡散率・熱伝導率は,材料設計とくに電気絶縁・放熱材料を考える上で重要です.ますますニーズも高まってきているようです.弊社にも,かねてより問い合わせがあり,答えるべく開発に取り組んで来ました.昨年来,M10type2として発売したものは我々からの回答を具現化したものです.当面は,高分子フィルム,無機ガラス,複合系材料ですが,長さで10mm程度あれば測定できます.
面方向の難しさは,熱流が規定できないことにあります.ヒーターのセンサー間の移動量をはかればいいのですが,試料を通るだけで無く,サポート材料,空気,配線材料,輻射(対流も)などの問題があって,厚み方向のような直列で扱えず,複雑な熱流が生じるためです.一定の条件,同じような厚さ,試料種類,電極間距離などを揃えて標準試料と比較検討することになります.
弊社の装置は 同一平面に電極を3つ設置し,1番目に通電加熱で温度波を発生させ,二つ目と三つ目を温度センサーとします.今,グリースを用いて,サンプルをこの三つに渡るように密着させます.もちろん発生させた熱流は複雑で,主にはヒーターの台座へ逃げるでしょう.しかし,センサー間にも一定程度流れます.ここで環境に強い位相変化を読もうとしたのが本装置で,しかも2位相型ロックインアンプを両方のセンサー電極につないで,ヒーターの温度波をレファレンスとしてロックして使います.これはM10type1と同じ方式なのでコントロールボックスが共通です.通常の測定ではロックインアンプは一台だけです.この二台ロックイン方式は精度はぐっと向上させます.接触さえうまく行けば安定して測定できます.電極間距離0.8mmで周波数は大体0.1Hzといった温度波が適切というところです.試料は挟むだけ.余計なことは一切しませんし,測定も標準で10-20分といったところです.精度を上げるには30-60分かけ,積算回数を増やして行います.発展中ですが,とりあえず簡便な測定法として提案しています.